英語俳句的生活

英語俳句的生活         
   いま、僕は英語俳句にはまっている。このきっかけは『オン・ザ・ロード』を書いたジャック・ケルアックを知ったことから始まる。池澤夏樹編集の青山南新訳のこの本を手にしたときに、彼の詩集の一つに”book of haiku"があることを発見した。ケルアックは1950年代のアメリカで異彩を放った詩人グループ「ビート・ジェネレーション」の一人であり、60年代のヒッピーの導火線となった存在である。
 アマゾンで早速注文して読み始めた。おもしろい。ケルアックが定義するハイクとは次のようなものだ。「3行で書くシンプルな詩。簡潔な表現で詩的な技巧にとらわれないで書くこと。ハイクで描く絵は小さくても、ビバルディの音楽のように軽快さと優雅さがあればいい」「最高のハイクはゴッホの絵を見るような興奮を呼び起こしてくれる」。


This July evenig,

a large frog

on my door sill
7月の夕べドアの敷居の上に大きなカエル


In my medicine cabinet,

the winter fly

has died of old age
薬箱の中老衰で死んでいた冬のハエ

 

Missing a kick

at the icebox door

It closed
anyway
冷蔵庫のドア蹴飛ばそうとしてミスったけど勝手に閉まった


 僕も真似をして書き始めた。3行であればいい。見たまま、感じたまま、思うまま、自由に書けばいい。それがケルアック流のハイクなのだから。

 

summer train---

all passengers

stand as silent as a stone
夏の電車どの乗客も無口に立っている


a strange vegetable store--

onions, grapefruits,

displaying for a week
不思議な八百屋1週間店晒しの玉葱果物


a black cat on the roof--

a man and a woman

arguing in loud voices
屋根上の黒猫怒鳴り合う男と女 

    
 英語でハイクを作るとき、もう一人の僕が作るような感じになる。それに季語にこだわらないで自分の限られた英語で作るのだから気が楽だ。短い言葉でつぶやくツイッターの世界に近いかも知れない。             

 

                                                  (野地邦雄)