岩波新書「俳句という遊び―句会の空間―」(小林恭二著・1991年発行)がおもしろい。当代俳人が一堂に会しての句会を実況中継的句会録といったものだが、まず顔ぶれがすごい。飯田龍太、三橋敏雄、安井浩司、高橋睦郎、坪内稔典、小澤實、田中裕明、岸本尚毅という面々だ。句会は題詠。90分で10の題で句を作る。選句が変わっている。採れる句はプラス1点、採れない句はマイナス1点を持ち点としてそれぞれ1句づつ選ぶ。だから、句によってはマイナス3点とプロの顔丸つぶれということになる。俳人の慌てふためくさま、緊張の様子、苦しみながら句を作る姿が浮かぶところがおもしろい。これだけなら奇妙な句会で終わってしまうのだが、句会の進行役兼実況報告者である著者の投句に対する解説や、俳句のあり方に関する見識が素晴らしく、俳句に取り組む考え方、姿勢といったことについって、深い示唆を与えてくれるところが秀逸。プロでも時間が限られると、訳の分からない俳句を作ってしまうという姿を見せつけてくれると、われわれ素人が駄句、凡句を作るのはあたりまえ、恥ずかしがることなどなにもないと、勇気さえもらってしまう。1995年に続編『俳句という愉しみ』が出ている。初学者だけでなく伸び悩んでいる方に推薦する本である。
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